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和菓子職人としての苦労や大変さはどんなところにありますか?

友輔さん:一番難しいのが商品開発。四六時中、新商品について考えているという感じです。思いついた時点で開発ノートに書きこんでいるのですが、商品化されるのはほんの一握り。
 開発にもつながる話でうちの大きな欠点が、催事に適したお菓子がないということです。百貨店さんからよくお声掛けいただくのですが、うちのメインは消費期限が1~2日と短い。日持ちする魅力的な商品ができれば、催事出店はもちろんネット販売も可能になり、店の名前を広く知ってもらうことができる。急務の課題として取り組んでいますが、なかなか納得できる商品が生まれないのが現状です。

お店をやっている方にとって一番大変な部分だと思います。商品を考える上で大切にされていることはありますか?

友輔さん:色んな人の意見を聞くこと。そして、和菓子に限らず何かを作る人間として多様なものに触れることが大事だと思っています。自分はゲームやアニメが趣味で出不精なところがあるので、ほかの趣味を見つけて、なるべく外に出ることを心掛けています。菓子づくりだけをしていればいいのではなく、もっと視野を広げることに注力したい。自然の事象や季節を肌で感じることが自分の創作意欲を駆り立ててくれるような気がします。

開店作業も友輔さんの仕事。最近では、店先で見かける野鳥に目を留めることが増えたそう

では、和菓子を作る上で心掛けていることは何ですか?

友輔さん:まずは安心・安全な商品を提供することです。私は蕎麦アレルギーを持っていて、それが原因で入院したこともある。だからこそ、誰もが安心して口にできるという部分は守っていきたいですね。
 それと専門学校時代から、「店の跡継ぎとなる人は熱意が少ない」ということをよく言われてきました。でも、そこで大切なのは、いかに熱意を高めようとするより、楽しく菓子づくりできる方法を模索すべきなんじゃないかということ。祖父や父を始め、たわらや歴代の店主はみんな趣味が豊富。小黒家は、楽しいことを糧に仕事を頑張る家系なのでしょうね。先ほどの商品開発にもつながる話ですが、楽しいと感じた気持ちを仕事や商品づくりに生かせたら素晴らしいですよね。

商品開発が直近の課題ということでしたが、改めて今後の目標を教えてください。

友輔さん:まずは、来年予定している150周年祭をしっかりと勤め上げること。祖父は92歳で亡くなりましたが、その直前まで作業場に立ち続けました。それだけの思いと覚悟でやってきた仕事を自分の代で適当に放り投げることは絶対にしたくない。幼少期から見てきた祖父や父の姿をしっかりと引き継いでいきたいですね。

たわらやの菓子を通じて地元の名が広まることを願い、地域色を取り入れた菓子づくりに力を入れている

 あとは、自分を育ててくれた町への恩返しです。私は今、安中市松井田商工会の青年部に所属していて、地域活性に携わっています。でも地域の過疎化は進み、廃業するお店が増えています。その波にいつかうちも飲まれてしまうのではと感じることもありますが、うちが頑張ることで地元が知れ渡るきっかけになるかもしれない。

楽しい幼少時代を過ごさせてくれた地元を不義理にはしたくないですからね。自分が育った町に恩返しできるよう、これからもおいしいお菓子を作り続けます。

編集後記


  松井田市街地から少し離れた場所に佇むたわらや。一見客にはやや分かりにくい立地にあるものの市外や県外から訪れる客が多いという。取材中、お茶請けとして出してくれた酒まんじゅうやいちご大福を食べて、その理由が分かった気がした。1つ1つ丁寧な作業を経ているからこそ醸し出される優しい味わい。長丁場に及んだ取材も、友輔さんは真摯に受け答えしてくれた。「自分は周りに流されて和菓子職人になった」「和菓子職人としての熱意が足りない」と口にした友輔さん。真面目な性格だからこそ感じる思いなのかもしれない。でも、家業や地域への思いを語る場面では、こちらの胸も熱くなるほどだった。多くの人を笑顔にしてきた伝統の味を、友輔さんならしっかりと守り継いでいくだろう。「日本人に生まれて良かった」。そう素直に思えるほど、たわらやのお菓子はおいしかった。

たわらや / 安中市

【たわらや より】
老舗と呼ばれるにふさわしくあれるよう、季節や風土を感じていただけるけるお菓子創りを心がけております。
それぞれの季節のお菓子を、数多く取り揃えてお待ちしております。

住所安中市松井田町松井田282
TEL027-393-3341
営業時間:9:00~18:00
店休日:月曜日(変更あり)
駐車場:6台

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